10代の若者はなぜソーシャルメディアに依存するのか?保護者ができる対策
現代のティーンエイジャーにとって人間関係の構築と維持に欠かせないソーシャルメディアですが、メンタルヘルスへの悪影響や極度な依存などのネガティブな面も指摘されています。 本記事では、子どものソーシャルメディア利用に潜む問題点とその対策をご紹介します。
内閣府(2022)の「⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査」によると、子どもがスマホなどのデジタル機器を用いてインターネットを利用する割合は年々増加を続けています。令和3年度には満10歳から満17歳の子どものインターネット利用率はどの学校区分でも90%以上を超え、小学生(10歳以上)は96.0%、中学生は98.2%、高校生は99.2%とほとんどの子どもが利用中と回答しています。
低年齢層の子ども(0歳から満9歳)でも、73.4%の保護者がインターネットを利用していると回答しました。通園中(0歳から6歳)では70.4%、小学生(6歳から9歳)では89.1%の利用率でした。
同調査でインターネットを利用すると回答した子ども(満10歳から満17歳)の1日あたりの平均利用時間は4時間24分で、どの学校区分でも前年度と比べて約1時間増加し、小学生は約3時間27分、中学生は約4時間19分、高校生は約5時間31分でした。低年齢層の子どもの平均利用時間は前年度比7分増加の約1時間50分でした。
また同調査における子どものインターネット利用目的を見ると、満10歳から満17歳の子どもが最も多くの時間を費やしているのは趣味・娯楽に関する活動で、平均利用時間は1日あたり約2時間45分でした。一方、学習目的での利用は前年度から23分増加したものの、平均利用時間は1時間1分と、趣味・娯楽での利用時間の半分もありません。この傾向を示すデータは生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)にもあり、他のOECD加盟国の子どもと比較すると、日本の子どもは学校内外のいずれでも学習目的のICT利用が少ないという特徴が見られます(国立教育政策研究所, 2019)。
以上をまとめると、子どもは小さい頃から日常的に趣味・娯楽目的をメインにインターネットを利用し、年齢が上がるほど利用時間が長くなる実態があるようです。
子どもはスマホやインターネットを日常的に利用していますが、デジタル機器の長時間利用による心身へ悪影響は看過できません。たとえば、近くを見る作業を続けることでの目の健康を損なう恐れや、座位姿勢を長く続けることと肥満や心身血管系の障害との関連が指摘されています。さらに気になるのは睡眠への影響です。病的なインターネットの長時間利用は睡眠不足の問題に繋がりやすく、また入眠前に液晶画面を見続けることも子どもの成長期に必要な良質な睡眠を妨げる要因として挙げられています(吉川, 2021)。
そのほか、総務省が運営するWebサイト「安心・安全なインターネット利用ガイド」では、ストレートネックやスマホ巻き肩、スマホ老眼なども長時間利用によって引き起こされるVDT症候群(Visual Display Terminalsの頭文字で、ディスプレイを持つ画面表示装置のこと)としています。
子どもに使いすぎて欲しくないという理由で、安易に子どもからスマホを取り上げたり、利用時間に制限を設けたりするだけでは、子どもをインターネットから引き離すのは難しいでしょう。それどころか、子どもは禁止・制限されたことでより興味を唆られ、保護者の目から隠れてスマホなどを利用するようになるかもしれません。そうなるといざトラブルに巻き込まれたときに、叱られることを恐れて助けを求めることを躊躇してしまう可能性もあります。このような事態を避けるためにも、むやみに利用に制限をかけるのではなく、子どもが自律的にインターネットを利用できる能力を備えられるように支援することが、大人には求められています。
子どもが自律的にデジタル機器を利用できるようになるまでに必要なのは、子どもと保護者の両方が納得できる家庭内での利用ルールを作り、運用することです。子どもが低年齢のうちは保護者からルールを提示する必要がありますが、子どもの年齢が上がれば上がるほど、ルールへの納得感が重要になります。子どもの要求と保護者の懸念をよく話し合い、双方ともに合意のあるルールを作ることで、子どものスマホやインターネットの利用制限への抵抗感を低減させる効果も期待できます。
また、ルールは最初から完璧なものを目指して設定するのではなく、ルール違反があった場合や子供からの要求に応じて都度見直しの機会を設け、子どもの状況や成長にあわせて修正していきましょう。
次の表には、ルールに盛り込みたい項目例とその説明を列挙します。
保護者は子どもが適切にルールを運用しているかを確認するために四六時中子どもを追いかけ回すわけにはいきません。子どものスマホやインターネット利用状況を把握し、過度な利用を防ぐには、セキュリティベンダーが提供するペアレンタルコントロールアプリの導入がおすすめです。「ESET Parental Control for Android」の「アプリケーションガード」機能を利用すれば、保護者のスマホやPCから子どもにとって不適切なアプリのブロック、ゲームアプリの利用時間制限、アプリの利用状況の確認ができるようになります。
「アプリケーションガード」機能では、子どもに利用させたくないアプリのブロックや、バッテリーの残量次第でのゲームアプリの立ち上げのブロックができます。
「ESET Parental Control for Android」の「アプリケーションガード」機能設定画面。
ゲームアプリに分類されたアプリの1日あたりの利用時間に制限を設けられます。平日、休日、時間帯による制限時間の変更も可能です。
「ESET Parental Control for Android」のゲームの時間制限設定画面。
「ESET Parental Control for Android」のレポート機能画面。ここからアプリごとの使用時間を確認できます。
現代の子どもたちにとって、インターネットに接続できるデジタル機器は身近な存在です。将来にわたって使い続けるであろうデジタル機器だからこそ、子どものうちから自律的にインターネットを利用できる力を身につけることが必要です。家庭内での利用ルールを定め、利用実態を把握し、子どもたちの安全なインターネット利用を見守りましょう。
内閣府(2022)「令和3年度 ⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査 調査結果(概要)」
https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r03/net-jittai/pdf/kekka_gaiyo.pdf
国立教育政策研究所(2019)「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査国際結果の要約~」
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/03_result.pdf
吉川徹(2021)「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち」合同出版
総務省「安心・安全なインターネット利用ガイド」
https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/trouble/reference/reference06.html