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10代の若者はなぜソーシャルメディアに依存するのか?保護者ができる対策

| 08 Aug 2022
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現代のティーンエイジャーにとって人間関係の構築と維持に欠かせないソーシャルメディアですが、メンタルヘルスへの悪影響や極度な依存などのネガティブな面も指摘されています。 本記事では、子どものソーシャルメディア利用に潜む問題点とその対策をご紹介します。

ソーシャルメディアとは

 ソーシャルメディアとは、TVや新聞に代表されるような従来型のマスメディアと異なり、利用者が双方向に情報を交換できるよう設計されたインターネット上のメディアのことです。ブログや動画投稿・共有サイトのように発信者と閲覧者が比較的はっきりと区別できるものから、SNSのように利用者間の相互コミュニケーションが中心のものまでさまざまな形態があります。

10代のソーシャルメディア利用実態

 総務省(2021年)発表「令和3年版 情報通信白書」によると、13歳以上の10代のインターネット利用率は96.6%でした。そのうち最も多いインターネット利用の目的・用途は「SNSの利用」(86.1%)で、次いで「動画投稿・共有サイトの利用」(73.9%)でした。

 

 

 

 総務省(2021)の「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」にも同様の報告があります。インターネットの利用項目別に見た平均利用時間で、10代が最も時間を費やしているのは「動画投稿・共有サイトを見る」(平日90.2分、休日131.8分)で、「ソーシャルメディアを見る・書く」(平日72.3分、休日85.4分)が続きます。男女別に見ると10代男性では「動画投稿・共有サイトを見る」時間が最も長く(平日85.8分、休日121.8分)、10代女性でも休日は「動画投稿・共有サイトを見る」(142.3分)が最長ですが、平日に最も長く時間を使っているのは「ソーシャルメディアを見る・書く」(101.2分)でした。

 

 また、10代はコミュニケーションの手段として携帯電話や固定電話での「通話系」よりも、ソーシャルメディア利用やメール利用による「文字系」を重用する傾向も明らかになっています。とくに、10代における「ソーシャルメディア利用」は平日・休日ともに平均利用時間が100分を超え、他の手段と比較して突出した利用時間の長さとなっています。

 

 なお、同調査によると10代の利用率が高いソーシャルメディア系サービスは1位「LINE」(93.7%)で、2位「Instagram」(69.0%)、3位「Twitter」(67.6%)と続き、4位「Facebook」(19.0%)以下を大きく引き離しています。

 

 

 

 調査の結果から、現代の10代の子どもは、日常的に長時間にわたって特定のソーシャルメディアを利用している傾向があると言えそうです。

 

なぜソーシャルメディアを使うのか

 しかし、子どもは必ずしもソーシャルメディアにポジティブな感情だけを持っているわけではないようです。

 

 米ピュー研究所によると、10代の子どもの多くがソーシャルメディアは友人との関係を深めるのに役立ち、かつ、自身の創作的な面を見せられると考えている一方で、約45%はソーシャルメディア上で遭遇する過剰な演出に圧倒されるとしています。また、10人中4人は、常に自分をよく見せる投稿や、コメントと「いいね」が多くもらえる投稿をしなければならないことに重圧を感じてもいます(Anderson & Jiang, 2018)。

 

 2021年9月、米ウォール・ストリート・ジャーナルに米フェイスブック社(当時、現メタ社)が、同社サービスのInstagramが10代の女子のメンタルヘルスに悪影響を与えることを把握しつつも、その実態を明らかにしなかったことを指摘する内部告発記事が掲載され大きな話題を呼びました。記事によると、子どもが自分の身体に対して良いイメージを持っていない場合、Instagramに数多く表示されるダイエット関連情報の閲覧がそれを悪化させ、場合によっては摂食障害や希死念慮を引き起こさせるとしています。

 

 気分を落ち込ませ、健康被害をもたらす可能性があるにも関わらず、なぜ10代の子どもはソーシャルメディアを利用し続けるのでしょうか。

 

 理由のひとつとして考えられるのは、子どもはソーシャルメディアを主なコミュニケーション手段として活用していることです。従来の電話などの通話系メディア、あるいは、電子メールやメッセンジャーサービスなどの文字系メディアであれば、やりとりは個人間またはグループ内に限られていました。ところが、子どもの利用率が高いソーシャルメディア系サービスは、画像・動画を含む近況の共有機能とダイレクトメッセージ機能の両方を備えています。サービスの多くはアプリを開くとホーム画面に他の利用者が共有した投稿を表示する仕組みのため、たとえ子どものサービス利用の主目的が個人間での連絡の取り合いだったとしても、受動的に他人の投稿を目にする機会は少なくありません。

 

 また、仲間内での円滑なコミュニケーションのためには、ひとりだけソーシャルメディアを利用しないという選択肢が子どもには取りにくいことも考えられます。みんなが利用しているサービスに自分だけアクセスしなければ、仲間はずれにされる不安、陰で中傷される不安に晒されることになります。仲間内で頻繁に連絡を取り合っていないと落ち着かない、友人から返事がすぐに来ないと不安になる、といった心理がSNSへの高頻度アクセスにつながっている可能性を指摘する研究もあります(橋元, 2018)。菅野仁著『友だち幻想——人と人の<つながり>を考える』(筑摩書房)では、このような関係性を「同調圧力」と呼んでいます。情報過多社会における心もとなさを、他人と群れることで逃れようとする「不安」の相互性の現れとして、子どもはソーシャルメディアを利用し続けている可能性があります。

 

家庭できる悪影響の緩和

 子どもにソーシャルメディアを無制限に使わせることは、ネガティブな影響を受ける可能性を考えると、保護者としては避けたいところです。子どもがソーシャルメディアを安全に使い続けるために、保護者が取りうる家庭での対策例を下記に説明します。

子どものストレスに目を向ける

 2015年に実施された横浜の公立中学校の生徒を対象にしたインターネット依存度調査によると、「現実から逃れるため」や「ストレス解消」などの逃避目的的なSNS利用が依存と密接に関わるという結果になりました(橋元, 2018)。子どもにソーシャルメディア利用への行動嗜癖が見られる場合は、利用を制限するだけでなく、背景に子どもがストレスに感じている要因がないかを観察する必要があります。

 

子どもとの関係を見直す

 先の調査では、子どもが保護者に対して「相談しやすい」「あなたの気持ちをよく理解している」「あなたを認めてくれている」「一緒にいて楽しい」などの好感情を持つ場合は、インターネットへの依存度が低くなる一方で、「あなたに干渉しすぎる」「あなたへの関心がない」などのネガティブな感情を持つ場合は依存度を高める傾向にありました。子どもとの関係を良好に保てていれば、ソーシャルメディア利用に問題が起きたときにも子どもは保護者に相談がしやすく、早期の対処が可能になります。 

 

日々の利用ルールを決める

 ソーシャルメディアを含むインターネットの利用場所や利用時間を決めた方が良いでしょう。前述の調査によると、家庭内ルールにインターネットの「自室 ・ 寝室での利用制限」「利用時間帯制限」があると依存度得点は低くなりますが、「成績低下で利用を不可にする」というルールは反対に依存度得点を高くする傾向にありました。ここから、懲罰の一環としてインターネット利用を禁止すると、飢餓感が煽られ嗜癖を強めてしまう可能性が考えられます。毎日の利用を少しずつコントロールすることで、子どものソーシャルメディアへの欲求を適度に充足することが大切です。

 

ペアレンタルコントロールアプリの活用

 子どもがソーシャルメディアの家庭内ルールを守っているかどうかを適宜確認するには、ペアレンタルコントロールアプリの活用が有効です。「ESET Parental Control for Android」のレポート機能を利用すれば、アプリごとの使用時間を確認できます。

 

「ESET Parental Control for Android」のレポート機能画面。

 

 

また「アプリケーションガード」機能を利用すれば、保護者のスマホやPCから子どもにとって不適切なアプリのブロック、ゲームアプリの利用時間制限が可能です。

 

「ESET Parental Control for Android」の「アプリケーションガード」機能設定画面。

 

アプリの1日あたりの利用時間に制限を設けられます。平日、休日、時間帯による制限時間の変更も可能です。

「ESET Parental Control for Android」のゲームの時間制限設定画面。

 

最後に

 現代の子どもにとって、ソーシャルメディアはただ情報を閲覧するためだけでなく、友人との関係を深めるために欠かせないコミュニケーション手段でもあります。メンタルヘルスへの悪影響など問題も指摘されている中で、子どもが安全にソーシャルメディアを楽しむためには保護者のサポートが欠かせません。家庭内ルールやペアレンタルコントロールアプリを活用しながら、子どものソーシャルメディア利用を見守りましょう。

 

参考文献

“令和3年版 情報通信白書”. 法務省. 2021.

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd242120.html, (accessed 2022-07-30)

 

令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書”. 法務省. 2021.

https://www.soumu.go.jp/main_content/000765258.pdf, (accessed 2022-07-30)

 

ANDERSON, M. & JIANG, J. “Teens’ Social Media Habits and Experiences”. Pew Research Center. 2018.

https://www.pewresearch.org/internet/2018/11/28/teens-social-media-habits-and-experiences/,  (accessed 2022-07-30)

 

Wells, G., Horwitz, J., & Seetharaman, D. “Facebook Knows Instagram Is Toxic for Teen Girls, Company Documents Show”. Wall Street Journal. 2018.
https://www.wsj.com/articles/facebook-knows-instagram-is-toxic-for-teen-girls-company-documents-show-11631620739?mod=hp_lead_pos7&mod=article_inline,  (accessed 2022-07-30)

 

橋元 良明. “ネット依存の現状と課題―SNS 依存を中心として”. ストレス科学研究. 2018, 33.
https://www.pewresearch.org/internet/2018/11/28/teens-and-their-experiences-on-social-media/, (accessed 2022-07-30)

 

菅野仁著. 友だち幻想——人と人の<つながり>を考える, 筑摩書房, 2008, p.36

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