ソーシャルネットワークに良い側面があることは間違いありません。しかし、このブームは、特に子どもや10代の若者に関して大きな懸念ももたらしています。では、ソーシャルメディアにはどのような負の側面があり、そこから子どもたちを守るにはどうすればよいのでしょうか。
1. プライバシーの侵害
他のオンライン活動と同様に、ソーシャルメディアへの投稿は永久に残ります。特にソーシャルメディアを使い始めたばかりで初めての体験にワクワクしている子どもは、このことに気付かず、全世界に向けて公開したことを後悔する内容を投稿し続けてしまうかもしれません。このような「過剰なシェア」には、本音をつぶやく、みっともない写真を投稿する、悪用される可能性のある個人情報を公開する、などが含まれます。
保護者ができる対策
· 大半のSNSでは、ガイドラインとなる最低年齢の制限が設けられていますので、お子さまが自分の年齢に合ったソーシャルメディアを使うようにしてください。
· お子さまとプライバシー設定について話し合ってください。ソーシャルメディアのプロフィールは非公開に設定して、お子さまの情報や投稿を見ることができるユーザーを管理する必要があります。
· 内容によってはソーシャルメディアへの投稿が思わぬ問題を引き起こす可能性があることを、お子さまと話し合ってください。たとえば、個人的な書類の写真、個人情報が記載されたチケット、スキャン用コードなどの個人情報や機密情報、画像などです。
2. 詐欺、デマ、フェイクニュース
ソーシャルメディアに投稿された情報はすぐに拡散されます。そして、残念ことに拡散されるのはおもしろい猫の動画だけではありません。詐欺、デマ、フェイクニュースの話題が最近よくニュースになっていますが、これは今に始まった問題ではありません。流行の商品を激安で提供すると宣伝している詐欺広告や世論を動かすための嘘のニュースから、明らかなデマや嘘にいたるまで、ソーシャルメディアは不正なコンテンツを拡散するための格好の場所となっています。たとえ子どもたちが、個人情報と引き換えに大金を得られると誘惑する詐欺メールの見分け方を知っていたとしても、SNS上に数多く潜むキャンペーンを見分けることはできないかもしれません。
保護者ができる対策
· ネット上の怪しいコンテンツによく見られる特徴を一緒に確認して、その見分け方を教えてあげてください。
o 詐欺について言うならば、「うますぎる話には落とし穴がある」というのは本当です。
o デマについては、センセーショナルな話、執筆者や信頼できる情報源の欠如、文体や文法の不備、有名メディアでの報道がないこと、などが主なサインです。
· 誤解を与える投稿やフェイクニュースの例についてお子さまと話し合い、そうした投稿の特徴・兆候を教えてあげてください。
3. ヘイト、いじめ、ストーキング
SNS上では誰でも声を上げることができますが、中には悪意を持った人もいます。公開討論に参加したお子さまが、予期していなかった嫌がらせやヘイトコメントへの対処を迫られたり、さらには、ネットいじめやストーカーの標的になったりする可能性があります。オンラインヘイトを受けた子どもは、困惑し、非常に大きなストレスを感じることとなります。親にとっては、従来のいじめ以上に見つけにくい問題かもしれません。
保護者ができる対策
· 一般的に、プライバシー設定を厳しくするなど、プライバシー意識を高めることで、迷惑な接触の大半を防止できます。お子さまは、見知らぬ人からのリクエストは拒否し、プロフィールの公開先を友達に限定する必要があります。
· お子さまがソーシャルメディアの利用で嫌な経験をしていると思われる場合は、そのことについて話をしてあげてください。お子さまが怯えたり非難されていると感じたりせずに、安心して打ち明けられるようにしてください。
· 問題が明らかになったら、お子さまがその問題を解決できるようにサポートしてあげてください。ほとんどのSNSでは、不安を感じさせるユーザーをブロックしたり、通報したりする機能が提供されています。問題が深刻な場合には、警察への通報も検討してください。
· 必要であれば、地域や国のSafer Internet Centerに連絡すると、スタッフが子どもの安全を守るためのさまざまな手続きを支援してくれます。一つとして同じケースはないため、それぞれに特定の手順が必要になります。最も重要なのは、子どもの身体的・心理的な安全です。Safer Internet Centerは、必要に応じて警察への相談も支援してくれます。
4. メンタルヘルスへの懸念
ソーシャルメディアのフィードを何時間もスクロールしている子どもは、気分や自尊心に影響を受ける可能性があります。ソーシャルメディアによって厳しい競争環境が生まれ、投稿に対する「いいね!」の数がそのユーザーの評価を直接的に示す指標となっています。子どもたちは仲間内での競争だけでなく、セレブやソーシャルメディアのインフルエンサーのプロフィールにもさらされます。ソーシャルメディアの「スター」たちが公開しているプロフィールは、完璧に見えるように作られたものであるため、その歪められたイメージを見せつけられた何百万人ものフォロワー(多くは、若くて多感な子どもたち)は、自分に対して物足りなさを感じてしまいます。自信喪失の問題に加え、ソーシャルメディアの長時間使用は注意欠陥障害、うつ病、その他の心理的問題との関連性が疑われています。この「疑われている」という部分が非常に重要です。ソーシャルメディアが問題の原因のように見えるかもしれませんが、一つの要因に過ぎない場合もあれば、全く関係のない場合もあります。子どもがスマートフォンに執着しているのは、何かから目をそらしているだけで、問題の根源ではないのかもしれません。
子どもたちに迅速なサポートを提供することは重要ですが、結論を急ぐべきではありません。子どもと一緒に時間を過ごし、子どもの生活のあらゆる面について話し合う必要があります。
保護者ができる対策
· ソーシャルメディアで何時間もチャットするよりも、友達と直接会うようにお子さまを促してください。
· 親も含めて、家族全員が1~2時間スマートフォンを片付け、スマートフォンの画面を見ない家族の時間を習慣として持つことを検討してください。
· 子どものソーシャルメディア利用に関連した行動や気分の変化に注意してください。いつもと違うことに気付いたときは、子どもに話しかけ、悩みの解決の手助けをしてあげてください。
· お子さまが悩んでいて、親の助けにも反応がないようであれば、メンタルヘルスの専門家に相談することをお勧めします。
5.「今を生きる」ことと自撮り写真のコレクション、どちらが大事?
子どもや10代の若者は、他者(主に仲間)からの承認を求めるものです。だからこそ、自分がやっていることをメッセージで広めたり、そのメッセージを適切なやり方で表現したりすることを非常に重要視します。子どもたちはこれまでもずっと、自身のイメージを高めようとしてきましたが、スマートフォンの登場によって状況は大きく変化しました。クールで魅力的だと思われようとして、パブリックイメージを作ることに多くの時間を費やしています。その過程で、子どもたちは(そして大人も)、たとえ情報を発信しなくても「今、この瞬間」を生きていることを忘れがちです。
保護者ができる対策
- 単に批判するのではなく、10代の若者にとって人気やイメージがどれほど重要なのかを理解しようとしてあげてください。
- マインドフルネスの考え方を取り入れ、子どもたちが「今を生きる」ことと、「賛成票、コメント、『いいね!』をもらうために生きること」を区別できるようにサポートしてください。大切なのはバランスを保こと取ることです。どちらか一方を目指す必要はありません。最善の目標とは、意識を高め、「今を生きる」ための活動を増やすきっかけになることです。
- 子どもと一緒に被害を減らすためのアプローチを実践し、リスクについて教えてください。
ありのままの自分であることの大切さを、教えてください。誰でも不完全な部分があるということを理解する必要があります。子どもに話しかけてください。ただし、子どもが自分の経験を話せるように促してください。上記を実践する際には、子どものロールモデルとして行動することをお忘れなく。