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子どもの自撮りに潜む身バレ・写真悪用などの危険性と防止策とは

| 09 May 2022
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スマートフォン(以下、スマホ)の普及により、昨今では子どもでも簡単に写真や動画の撮影ができるようになりました。インターネット上では、自撮り(またはセルフィー)と呼ばれる自身を被写体とした写真や動画の共有も盛んに行われています。しかし、自撮りがきっかけで子どもが事件や犯罪に巻き込まれるケースは後を絶ちません。本記事では、子どもの自撮りに潜む危険と、その防止策を見ていきます。

スマホの普及と写真の共有

 この10年でスマホの世帯保有率は9.7%から86.8%と著しく増加しました(総務省, 2021)。スマホの普及によりソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)の利用者が増え、近年ではスマホで撮影した写真や動画をSNSやコミュニケーション系のアプリケーション(以下、アプリ)を介してインターネット上で共有する行為が定着しました(大平, 2021)。

 スマホ保有率の高さは子ども社会にとっても例外ではなく、内閣府(2022)の調査によると子どもが自分専用のスマホを利用している割合は小学生で63.3%、中学生で 91.1%、高校生で99.3%です。同調査によると、スマホ利用者の76.0%がインターネットで「投稿やメッセージ交換をする(メールやチャットを含む)」と回答しており、さらに32.7%の子どもが「撮影や制作、記録をする(動画撮影や音楽制作、編集を含む)」ことがわかりました。なお撮影や制作、記録をすると回答した子どものうち、インターネット配信したことがあるのは18.2%でした。

 このように子どもにとって身近なスマホでの写真・動画撮影とSNS投稿ですが、個人的な情報を公開する行為であることから、保護者も子どもと一緒にさまざまな危険性があることを理解する必要があります。

自撮りに潜む危険

 インターネット上での自撮り写真・動画の共有に潜む危険は、大きく分けて被害者になる・加害者になる・事故に遭うの3つが考えられます。次に示すのは自撮りに潜む危険の一例です。

身バレ

 「身バレ」とは、SNSに投稿した自撮り写真や文章などを手がかりとして、隠しているはずの身元が特定されたり、居住地や現在地を探し出されたりする状況を意味します。特定者は一枚の写真から身元を割り出すこともありますが、SNSの投稿内容から得られる断片的な情報を集めて身元を絞り込むこともあります。ネットストーカーに身元を特定されてしまうと、実生活を脅かされるまでにつきまとい行為がエスカレートすることもあるとして、総務省のWebサイトでもSNS投稿に関して注意を促しています(2013)。

自撮り写真を悪用される

 インターネット上で共有した自撮り写真をSNSのプロフィール写真として無断で使用されるケースは、警視庁のWebサイトでもよく寄せられるインターネットトラブル事例として紹介されています(2022)。ほかにも、保護者がインターネット上に共有した自分の子どもの写真を、見ず知らずの他人がその人の子どもであるとしてSNSやブログに勝手に掲載する「デジタル誘拐」と呼ばれる写真の悪用ケースも報告されています。

自画撮り被害に遭う

 チャットやメッセージのやりとりの通信相手の求めに応じて子どもが自身の裸の写真を送信してしまう児童ポルノ被害が年に500件ほど発生しています。自画撮り被害についての詳細は、当サイト内の過去記事「自画撮り被害から子どもを守る。チャイルドグルーミングの手口とは?」をご参照ください。

他人の写真を無断使用する

 他人の写真を使用する点で上の「自撮り写真を悪用される」ケースと似ていますが、こちらは投稿者が加害者になってしまう可能性です。他人が写り込んでいる写真を無断でインターネット上に共有することは、意図せずとも加害行為にあたる場合があります。基本的にSNSへの投稿のあるなしに関わらず、人物の特定が可能な状態の他人の写真を無許可で撮影することは肖像権の侵害にあたり、場合によっては賠償問題にも発展しかねません。

職場での不適切な行為を自撮りする

 飲食店やコンビニのアルバイト従業員が、職場の什器や商品をふざけ目的で不適切に扱う様を自撮りしてSNSなどに投稿する行為は、2013年に大きく話題になった後も、現在まで断続的に発生しています。このような事件を起こすと加害者は損害賠償を求められる民事裁判とは別に、名誉毀損罪、威力業務妨害罪、器物損壊罪などの刑事罰が与えられる可能性もあります。

危険な自撮りをする

 滝や崖などの高所や災害現場での自撮り、野生動物との自撮りなど、危険な状況での自撮りをSNSに投稿し、人々の注目を集めようとする行為はエクストリームセルフィーと呼ばれ、怪我や死亡事故の原因になっています。スペインのiO Foundationによると英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語圏内では2008年から2021年1月までの間に少なくとも379人がこの自撮りにより死亡したとされています(Güell, 2021)。


自撮りで危険な目に遭わないために

 自撮りやSNSを安全に楽しむために、注意すべき点を次に紹介します。

自撮りは慎重に行う

 SNSに投稿する自撮りを撮影する際には、個人を特定できるような情報を含まないように注意が必要です。顔だけではなく、学校の制服やかばんなど所属がわかるようなものも隠します。写真の背景に生活圏を特定できるような情報が写り込んでいないかも確認します。建物や看板はもちろん、固有の識別番号が割り振られているマンホールや電柱、自動販売機からも撮影場所は容易に特定できます。

 他人の写り込みにも注意を払いましょう。知人との自撮り写真をSNSに投稿する場合は、投稿する前に必ず知人に掲載許可をもらいます。知人が一度承諾した後でも、掲載を取り消してほしいと依頼があった場合はすぐに対応しましょう。掲載許可を得るのが難しい他人の場合は、個人を特定できるほどはっきりと他人が写り込んでいない写真を選んだり、ぼかしを入れたりします。

位置情報はオフにする

 スマホのカメラで撮影した写真には、Exif(イグジフまたはエグジフ)といって、撮影日、撮影者、撮影場所などの情報が埋め込まれています。SNSによっては写真・動画の投稿時にこれらの情報も一緒にアップロードされてしまうので、カメラ使用時に位置情報(ジオタグ)を取得しないようにスマホの設定を変更すると良いでしょう。

撮影後すぐのSNS投稿は控える

 外出先でのリアルタイムなSNS投稿は、投稿者の現在地特定を容易にします。短時間のうちに何度も投稿を繰り返すと、次の行き先を推測されやすくなり、待ち伏せに利用されるかもしれません。また、旅行中の投稿であれば、自宅が留守であることを暗に示唆することになり空き巣被害を誘発する危険もあります。

公開範囲を制限する

 SNSのアカウントはだれでも投稿を閲覧できる公開設定ではなく、承認した人だけに投稿の閲覧を許可する非公開設定、いわゆる鍵アカウントにする方が悪意のある人の目につきにくくなります。現実に付き合いがある人だけをフォロワーにするのが望ましいでしょう。

 しかし鍵アカウントであっても他人に情報を開示していることには変わりなく、隠しておきたい情報が流出しないとは言い切れません。Instagramのストーリー機能のようにアップロードした情報が一定時間後に自動的に消える機能を使用しても、公開期間中に写真・動画を保存されて自分の知らぬところで拡散されることもあり得ます。個人情報を容易に特定できるような自撮りや仲間内での悪ふざけを撮影した写真などはSNSに投稿しない方が良いでしょう。

 

ペアレンタル・コントロールアプリの活用

 子どもがスマホでどのような写真や動画を撮影しているかを逐一チェックするのは現実的ではありませんが、ペアレンタルコントロールアプリの導入は保護者による子どものスマホ管理の質を向上させるのに役立ちます。「ESET Parental Control for Android」では、保護者のスマホやPCから子どものスマホにインストールされているアプリの一覧を確認できます。この機能で、保護者は許可していない写真・動画共有アプリがインストールされていないかをチェックできます。利用させたくないアプリが見つかれば、「不適切」なアプリとして分類することで、アプリを起動できないように制限をかけられます。

「ESET Parental Control for Android」のアプリ一覧、および、適切不適切の分類画面。

 

最後に

 スマホの普及によって子どもも簡単に自撮り撮影とインターネット上での共有ができるようになりました。子どもが安全に自撮りを楽しむためには、子どもにも自撮りのSNS投稿には危険がつきものであると認識してもらい、むやみに個人情報を開示しないよう心がけてもらう必要があります。保護者はペアレンタルコントロールアプリなどを用いながら、子どもが適切にスマホを運用しているかどうかを見守りましょう。

 

参照文献

 

情報通信政策研究所. “令和3年度版情報通信白書”. 総務省. 2021. https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd242110.html,(accessed 2022-05-06)

 

“令和3年度 青少年のインターネット利用環境実態調査報告書”. 内閣府. 2022. https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r03/net-jittai/pdf/2-1-1.pdf, (accessed 2022-05-06)

 

大平哲男. “スマホと SNS によって変化した写真概念の一考察”. 関西ベンチャー学会. 2021.

http://www.kansai-venture.org/wp-content/uploads/2021/05/6a38de4d8065eb33c5f22b2244fcf80a.pdf, (accessed 2022-05-06)

 

“事例6:ネットストーカーに注意”. 総務省. 2013.

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/enduser/case/06.html, (accessed 2022-05-06)

 

“自分の名前や顔写真を無断で使用された”. 警視庁. 2022.

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/nettrouble/jirei/syozoken.html, (accessed 2022-05-06)

 

Oriol Güell. “Rise of selfie deaths leads experts to talk about a public health problem”.EL PAIS. 2021.

 

https://english.elpais.com/usa/2021-10-29/rise-of-selfie-deaths-leads-experts-to-talk-about-a-public-health-problem.html, (accessed 2022-05-06)

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