子どもはスマホゲーム依存?やり過ぎや高額課金などの危険を回避するには
子どもも日常的に遊んでいるスマートフォン(以下、スマホ)やタブレットのオンラインゲームですが、のめり込みが心配な保護者も多いのではないでしょうか。
子どものオンラインゲーム利用の現況
内閣府(2022)『青少年のインターネット利用環境実態調査』によると、10歳以上の小学生から高校生までの子どもがインターネットを利用している割合は97.7%であり、そのうちの77.0%がスマートフォン(以下、スマホ)を利用しています。同調査によると、インターネットの利用内容としてゲームを挙げる子どもは82.0%おり、この割合は年々増加傾向にあります。また、使用デジタル機器をスマホに限っても、2021年には72.0%の子どもがインターネットの利用内容に「ゲームをする」と回答しています。多くの子どもにとってスマホゲームは身近な存在であることが伺えます。
オンラインゲームが子どもにもたらす問題
いつでも手元にあるスマホからゲームができるようになったことによる、子どもへの悪影響は見逃せません。
長崎大学の調査では、調査に参加した10歳から18歳までの子どもの7.0%にゲームへの依存の可能性があると報告されています。ゲームへの依存は、2019年5月に世界保健機関(以下、WHO)が30年ぶりに改定した国際疾病分類(International Classification of Diseases、以下、ICD)に新たな依存症の分類として、ゲーム症(障害)を収載したことで話題になりました。ICD-11の記述によると、ゲーム症(障害)には次のような症状があります。
・ゲームに関する行動(開始時間、終わり時間、頻度、内容など)をコントロールできない
・日常の活動やほかの生活上の関心ごとよりもゲームに関する行動が優先される
・家庭不和や学業不振、健康被害などの著しい悪影響があってもゲームに関する行動を続ける、または、エスカレートする
これらの状態が12ヶ月以上続いている、もしくは、すべての症状が著しい場合には、ゲーム症(障害)の基準に当てはまることになります。ただし、専門家の間でもゲーム症(障害)を独立した精神疾患とするかは、まだまだ議論の余地があるのが現状であり、ゲームにのめり込んでいるからすなわちゲーム症(障害)であるとは単純には言えないようです。
とはいえ、子どもがスマホゲームに関する行動への強い嗜癖を示すことで、その子の生活に困難がもたらされることは間違いありません。たとえば次のような生活への悪影響が考えられます。
1つ目は、デジタル機器の長時間利用による健康被害です。至近距離を注視し続けることで目の健康を損なう恐れや、座位姿勢を取り続けることで肥満や心身血管系の障害のリスクが高まります。ほかにも、スマホ老眼やストレートネック、スマホ巻き肩を患う可能性も考えられます。
2つ目の考えうる悪影響は、生活の乱れです。特に気になるのは睡眠への影響です。余暇の少ない学齢期の子どもは、プレイ時間を確保するために睡眠時間を削ることになり、慢性的な睡眠不足に陥る可能性があります。いじめや子どもとネットについての研究をしている兵庫県立大学准教授の竹内和雄は著作『こどもスマホルール 賢く使って、トラブル回避!』で、小学校4年生から高校3年生を対象としたアンケート調査の結果、平日にネットを4時間以上利用する子どもの54.8%が深夜12時より遅く寝ていることを明らかにしました(2022)。夜中までゲームをしていると、起床が遅くなり朝食を食べる時間がなくなる、睡眠不足のためにイライラしがちになる、勉強時間をゲームに費やしてしまうために学業に自信が持てなくなるなどの事態を引き起こしかねません。
3つ目は、金銭感覚の欠如が挙げられます。消費者庁(2022)の『令和4年版 消費者白書』によると、オンラインゲームに関する子どもの消費者生活相談件数は増加傾向にあります。2021年は全体の相談件数(7,276件)中の過半数を超える4,443件が子どものオンラインゲームでの消費行動に関する相談でした。同白書には、子どもが保護者のクレジットカードを無断で持ち出したり、デジタル機器に残っていたカード情報を使ったりして、高額課金に陥るケースが典型的な相談内容として紹介されています。
4つ目は、家庭内に不和を引き起こす可能性です。保護者は、子どもが勉強を疎かにしているように見えたり、学校へ行き渋ったりしていると、その原因を短絡的にスマホゲームのやり過ぎに求めたくなるものです。子どもはゲーム症(障害)なので、その病気さえ治れば、勉強も学校も上手くいくと考えたくなりますが、実際には子どもは学校生活や日常生活に強い困難を抱えているために、ゲームにのめり込むことで安心感を得ている可能性が大いにあります。そのような中で、保護者が安易にゲームを悪者と決めつけ、子どもに病気のレッテルを貼ることで、家族間の対立が発生・悪化し、子どもがますますスマホゲームへの行動嗜癖を強めるような事態になりかねません。
スマホゲームへの過度なのめり込みを防ぐには
子どものスマホゲームへののめり込みは心配ですが、どの程度スマホゲームをしていると嗜癖と言えるのかに、たとえば毎日3時間ゲームをしている、もしくは、毎月3万円を超える金額をゲームに費やしている、などの数値による判断基準を設けるのは難しいでしょう。しかし、子どもの生活に乱れがあるかどうかは重要な判断ポイントになります。物事に熱中する様を表すのに「寝食を忘れる」という言葉がありますが、子どもが十分な睡眠時間を確保できているかどうか、または、きちんと食事が摂れているかどうかは、保護者として気をつけておきたいところです。
寝食を疎かにするほどのスマホゲームへののめり込みを防止するためにも、家庭内でゲームの利用ルールを作成し、運用するのがおすすめです。家庭内ルールは保護者が一方的に子どもに押し付けるのではなく、まずは保護者と子どもとで、時間的・金銭的な制約なしにスマホゲームをする場合に発生しうる問題について話し合い、子どもにルールの必要性について理解してもらうことが重要です。前述の『こどもスマホルール 賢く使って、トラブル回避!』では、睡眠不足の悪影響は子どもも実感しやすいことからも、話し合いの中心には「睡眠時間の確保」を据えると、うまくいきやすいとアドバイスしています。
ルールに含めたいのは、スマホゲームを利用する際の「時間」「場所」「マナー」です。また、トラブルがあった際の相談先も予め決めておくとよいでしょう。その他、具体的なルール例に関しては、当サイト内別記事「子どもはスマホ依存?インターネット長時間利用の対策」もぜひ参照してください。
ペアレンタルコントロールアプリの活用
セキュリティベンダーが提供するペアレンタルコントロールアプリの導入も、子どものスマホゲームへののめり込みを防ぐのに有効です。「ESET Parental Control for Android」の「アプリケーションガード」機能を利用すれば、保護者用管理画面から不適切なアプリのブロック、ゲームアプリの利用時間制限ができます。
「アプリケーションガード」機能では、子どもに利用させたくないアプリのブロックや、バッテリーの残量次第でのゲームアプリの立ち上げのブロックができます。
「ESET Parental Control for Android」の「アプリケーションガード」機能設定画面。
ゲームアプリの1日あたりの利用時間に制限をかけられます。平日、休日、時間帯によって制限時間を変更することもできます。
「ESET Parental Control for Android」のゲームの時間制限設定画面。
「ESET Parental Control for Android」のレポート機能画面。ここからアプリごとの使用時間を確認できます。
最後に
子どもにスマホゲームを適度に楽しんでもらうためには、手放しにゲームを与えるのではなく、ゲームをやり過ぎる危険を保護者と子どもの両方が認識し、家庭内で利用ルールを作り、ルールに則って遊ぶことが大切です。
参考文献
“令和3年度 ⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査 調査結果(概要)”. 内閣府. 2022. https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r03/net-jittai/pdf/kekka_gaiyo.pdf, (accessed 2022-10-25)
ICD-11: International classification of diseases (11th revision). World Health Organization. 2019. Retrieved from https://icd.who.int/ (accessed 2022-10-21)
“令和4年版 消費者白書”. 消費者庁. 2022. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/assets/2022_whitepaper_all.pdf, (accessed 2022-10-25)
竹内和雄. “こどもスマホルール 賢く使って、トラブル回避!”. 時事通信社. 2022.